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  2011年度 ワークショップ講演録



■第11回ワークショップ(2011年6月24日)

ゲストスピーカー:流通科学大学教授 上田 義朗氏

タイトル : 「チャイナ+ワン:メコン川流域三カ国の現状と課題」
Tゲスト講師の紹介
流通科学大学教授・日本ベトナム経済交流センター副理事長
岩井証券ホームページ「週刊ベトナムレポート」連載中
   
U講義の概要
1メコン川流域三カ国の経済概況
東西経済回廊・南北経済回廊・南部経済回廊によってメコン川流域三カ国+タイ+中国(雲南省・広西チワン族自治区)+ミャンマーの経済圏の一体化が進展中。
国(点)から地域(面)に視点を拡大する。
(1)ベトナム経済危機説:根本的な原因は貿易赤字と「ドン安」の悪循環。赤字解消による外貨準備の増加が経済の安定成長の大前提。そのために輸入代替産業の育成に本格的に取り組み、「裾野産業」(サポーティング・インダストリー)の育成が急務。ここに日本の中小企業の出番がある。ベトナムにとってWTO加盟が「黒船」とすれば、TPP(環太平洋経済連携協定)加盟は「GHQ」に匹敵。この「外圧」の改革を経て国営企業改革・知的所有権保護・ワイロ解消などが進む。その結果、ベトナムの経済制度は中国よりも優位性をもつか?いわゆる「中進国の罠」の懸念は?
(2).変貌するベトナム経済:2000年からの株式市場の発展。富裕層の出現。一人あたり国民所得が1000ドル超。日本企業と協力してサービスを提供する。日本とベトナム企業間の「Win−Win関係」の形成を目標とする経営戦略を構築する。そこでカンボジアやラオスを視野に入れる。
(3).ベトナムと日本の近似した国民性:日本にとって最高の友好国。ベトナムの優秀な人材を有効に活用するための指導力と信頼できるパートナとの出会いがベトナム進出における成功の要点である。
(4)ラオス:2010年に一人当たり国民所得は1000ドルを超えた。本年1月から株式市場も開設。安定した政治体制はベトナムと同じ。温和で勤勉な国民性はベトナム以上に魅力。タイ・中国・ベトナムと友好的な政治関係は円滑な経済連携の基盤となる。人口は600万人弱だが、人口成長はベトナムよりも高い。ベトナム企業の進出も活発。ワイシャツの山喜、王子製紙、ツムラ、丸八真綿(ベトナムから移転)など。
(5)カンボジア:世界遺産アンコールワットで有名であるが、経済活動にも注目。2010年3月にJETRO事務所が開設。労働集約的な産業がベトナムからカンボジアに進出。金融制度はラオスと同様にベトナムよりも自由。多党制の王制国家。本年に株式市場の開設。日系のプノンペン経済特区・シハヌークビル港輸出加工区。シハヌークビル港・プノンペン港・カイメップチーバイ港から出荷。ホーチミン市とプノンペンは陸路で日帰りが可能になる。株式市場は本年7月開設か?
(6)将来の展望
ベトナム:自国資源を加工・開発して国内販売と輸出する。ラオス:タイ・ベトナム・中国の「衛星工場」としての役割。農産物加工と水力発電が有望。観光資源の潜在力も大きい。
カンボジア:農産物加工と労働集約産業が有望。アンコールワット以外の観光資源の活用。

2.経済統合の最新動向
AEC(アセアン経済共同体)統合とTPP(環太平洋経済連携協定)が形成中。現在までTPP加盟交渉国は9カ国(ブルネイ・チリ・マレーシア・ニュージランド・オーストラリア・ペルー・米国・ベトナム)日本は6月から11月に態度表明を延期。日本の「攻める農業」は可能か?

3.「国境の消滅(ボーダレス)」の展望
 共通の理念は「普遍的価値」の追求:@経済成長、A富=所得の平等、B民主化(=人権・自由)、C政治的安定、D外国からの自主独立。国家の政治目標を世界の共通目標に拡大する。

4.日本の現状と展望:アジアにおけるビジネスチャンス
 少子高齢化・人口減少・市場縮小・デフレ・東日本大震災・・・・日本企業の活路は海外にしかない。アジア経済の成長とともに日本も成長する。ただし中小企業には海外展開に資金力・ノウハウ・人材・情報・経験が不足している。ロットが小さいため商社等もビジネスとして扱わないのが現状。これらを「言い訳」にした現状維持か?どちらに将来性があるか?リスクのないところにリターンもない。経営者の創業者=起業家精神を少し余裕のある今こそ発揮すべき時ではないか?成長するアジアとともに・・・
   
V質疑応答
Q1. 「ベトナム経済危機説」の背景には輸出至上主義があると思うが、なぜそのような政策志向になるのか。
A1. 国際金融機関のエコノミストは直接的にはIMF、世界銀行の職員が自分の任期の成果以外あまり考えず、マクロ経済に基礎づいた提言をする。これが「悪循環」の構造である。国際競争力のある商品の生産や販売を中長期的に育成すべきであるが、それを実行しているのは日本企業だけである。
Q2. ベトナムと中国の関係がもっと悪くなっていくと、日本企業に及ぼす大きな影響は何でしょうか?
A2. 経済関係がより重要なので、戦争する可能性は低い。アメリカ・ロシアなどの他国との関係もあるし、中越両国とも社会主義だから、考え方も近い。
Q3. 日系企業がベトナム・ラオス・カンボジアへ進出する際、一番の障壁は何でしょうか?
A3. ベトナムは送金などの制約がある。(ラオス・カンボジアはない)周りの小売業に支障があるかないかを調べて、支障があると展開できない。
Q4. ベトナムの経済成長率がなかなか増加しない理由は、貿易赤字だと言われていますが、それ以外の原因は何かありますか?
A4. ベトナムの経済成長は悪くない。ただし、インフレが発生している。経済成長の目標を小さくして正常な経済にするのが望ましい。
Q5. ベトナムの北ハノイ、ベトナムの南ホーチミンでは、経済発展はどちらが発展しているのか?昔のイメージでハノイは共産国、ホーチミンはアメリカ資本主義。
A5. 平均国民所得は1000ドン、ホーチミンは3倍、ハノイは2倍、南の方が発展している。
Q6. ベトナムと中国は現在政治的には、南沙諸島の問題で緊張関係にありますが、経済的にもベトナム政府は中国をけん制するために経済パートナを組む上で、戦略的に動いていると思いますか?
A6. ベトナム経済は基本的に政治と経済を分けて、冷静に中国との関係を保っている。基本的外交上では全方位外交を貫いている。ベトナムはASEANの粋組みで中国との諸問題を解決しようとしているが、一方、中国は二カ国間で問題解決しようと試みている。
Q7. 日本はベトナム、ラオス、カンボジアをモノ作り新興国として見ているようですが、モノ作り新興国の基準は何でしょうか?やはり、資金(人件費)が主因だと考えられているのでしょうか?
A7. 日本企業の海外進出のパターンから見ると、まず韓国、台湾へ。次にタイ、中国というような流れが見られます。つまり、日本企業は常に人件費の低いところで進出している。中国人民元の切り上げや人件費の高騰などにより、日本企業は中国的システムや中国体制のなかだけではなかなか成長し続けられないと考えている。リスク分散なども含めて、中国の次はどこかというと、やはり、メコン川流域3国をモノ作り新興国として考えているのでないか。
Q8. ベトナムの裾野産業育成のため、日本の中小製造業が協力し得る領域は広いと思うが、現時点で日本の中小製造業がベトナム進出で成功するための、進出形態と留意点 は何でしょうか。
A8. 進出形態としては、100%独資もあれば、消費財市場の場合には合弁での進出(ファミリーマット、イオンのケース)、または合弁から100%独資というケースも考える(エースマック、コカコーラ)。また、安全・安心な工場団地への進出も重要。
留意点としては、@ベトナムから海外送金する場合、自由に送金出来ない。A大店法などあいまいな規制の存在。Bコンプライアンスの問題の存在。
   
W 中本教授によるまとめ
 本日の講義は、ポスト中国として台頭してきたメコン川流域3カ国(ベトナム、ラオス、カンボジア)の経済の現状とこれら3カ国の日本企業にとっての意義について講義していただいた。
  とくに成長率が高いベトナム経済に関して、「中進国の罠」論の視点から、ベトナム経済の問題点を指摘された点は重要だと思う。「中進国の罠」とは途上国から抜け出した国が、一方で途上国の低賃金圧力に押され、他方で先進国の高い技術水準に到達できず、経済停滞が生じることを言う。この問題の克服には、産業構造の高度化とサポーティング産業の育成が不可欠である。前者は、途上国からの追撃を避けるためであり、後者は輸出増加に伴って輸入も増加するような貿易赤字体質を克服し、現地調達率の向上を期すとともに、先進工業国への足掛かりとなる技術開発を促進するためである。
以上

指導教員:中本 悟 教授
司会:奥 紗永子、 書記:宮本 賢治、白 潔




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