asi2_03

▲ワークショップトップへ
  2011年度 ワークショップ講演録



■第12回ワークショップ(2011年12月20日)

講師:流通科学大学総合政策学部 教授 辻 美代先生

タイトル:「中国アパレル産業の新展開」について
T.中国アパレル産業の発展
○1972年の日中国交回復による繊維貿易の飛躍的な拡大
○1978年12月の改革開放後、中国の外資の受け入れはじまる→香港中心
 委託加工貿易主体(「三来一補」)
○1985年のプラザ合意後、超円高による日本の繊維製造業の競争力の低下
 →アパレルの海外移転が始まる  …台湾 韓国 香港等NIESへ、が中心
 →川上から川下まで繊維製造業の中国への工場移転、
 東レ 帝人も中国に工場を移す…江蘇省南通市へ
○1987年〜中国向け輸出は資材・原料が主体だった
 中国で生産しているのは日系メーカー・商社であり、物作りして ”持ち帰り輸出”
 中国のもの作りを日本の技術者が渡航して指導、レベルを上げる
  (ex. ユニクロの 匠集団)
 日本の委託加工を受け入れる事≒欧米の委託加工も受け入れOKになって行く
○1992年 ケ小平の「南巡講話」社会主義国が西側諸国の手法を取り入れ、経済発展へ、○2001年 中国WTOに加盟 
 日-日ビジネスから 中国を市場として考えるようになる(日中ビジネス)
 (ex. 潟激iウンと山東如意科技集団の提携 後に伊藤忠商事の資本参加)   
   
U.中国アパレル産業の現状
○国家戦略を担う 産業となる。フルセット型産業構造の形成。繊維(化学・天然)生産からアパレル生産まで、さらに家庭・インテリア用や産業用繊維までのフルセット型構造へ。
○CHINA+ONEでアパレルが中国から外に移設しても自動車・住宅用繊維資材は需要が
中国内であるため、まだ伸びる。
○1990年代の半ば迄中国の貿易収支の赤字を繊維産業がカバーしていたが、最近は家電・電気関係の産業が上昇して繊維の輸出比率は減少。
○日本は日米繊維摩擦から中国向けは管理貿易が主流だったが2001年1月の中国のWTO加盟により2005年1月からは完全に自由化。
○2005年5-6月の激しい貿易摩擦から輸出抑制政策を取り、輸出規制をかけ始める
→加工貿易の制限へ  増値税還付率引き下げへ
○ビジネス環境の変化
  人民元切り下げ、賃金の上昇、綿花の価格高騰、新労働法施行、新税法等 
 
V.中国アパレル企業の新動向
○2010年以降 中小企業の淘汰がはじまっている→寡占化(独占化)
○東部(沿岸部)から中部以西へ繊維産業の移行している…さらに奥の省に生産が移行
 Ex. 地域別アパレル生産量…中部へ。アパレルへの投資額…中部が沿岸部を抜く。
○内需拡大の方向へ
 第11期五カ年計画…アパレル20%増へ
 収入の増 2008年USD3,000-/人 → 2011年USD5,000-/人 (GDP)
○ブランド化の確立
 紳士物では雅戈爾(ヤンガー)杉杉 報喜鳥 紅豆 等
 婦人物でブランド確立の動き→中国人デザイナーの台頭
○ファストファッションの隆盛((SPAとして)
 Etem、ESPRIT、GAP、GUESS、MANGO、ZARA、H&M、ユニクロ
 上海では Bestseller(デンマーク)が人気ブランド
○海外ブランドの中国進出…上海進出 南京路人民広場西側にブランドショップ立ち並ぶ
 中国企業がブランド企業を買収…PRADA ピエールカルダン 等‥
○中国のブランド企業 SPA企業の紹介
 
 2010年売上高471.25億円(日本年換算)…RMB37.7億、
 店舗数 直営・加盟店合わせて3,659店舗(ユニクロ 約1,000店舗)、
 工場を持たないファブレス企業でオリジナルブランド。
 商品企画:中国人好みの色合いを志向、研究。
 外国ブランドの研究をし、フランス人デザイナーを雇用、
 店舗展開:店舗の展開スピードが速い→新たな顧客層を新興住宅街に求める
 「山東如意科技集団」(2010年12月期売上 143.7億元(1,796.25億円)が
  レナウンの買収(2010年) 41.8%の株式を所有。
  2011年に伊藤忠商事が30.0%の株式を取得
○中国企業の海外進出、中国政府が海外進出を奨励…「対外投資国別指導目録」、
 投資奨励国:アジア、アフリカ 中南米、カンボジアに進出した中国系企業(輸出)
  →カンボジアの工業化へのエンジン。
 日系企業としては CHINA+ONEに商社が絡むケース多くなっている。
 
【質疑応答部】
Q1. 2012年以降中国人民元切り上げについて、アメリカからかなり圧力がかかると考えられる。この場合、中国は輸出企業体としての競争力はかなり低下し、ASEANへの生産シフトが加速すると思われますが、この点について動向をどう考えるか?
A1. 人民元が高くなると輸出競争力が無くなっていくが、反面、内需拡大を人民政府は志向している面もある。同じく、他者要因のこわさから輸出を一定にして内需で稼ぐという構造も考えている。賃金を上昇させることも内需拡大のための施策と考えられる。
Q2. 今後、日本のアパレル産業が中国市場で勝負をかけるとすると、ユニクロやメーターズボンウェイのような流行に敏感な若者向低価格品の分野ではなく、しっかりしたつくりであるオーダーメイドでの高価格品で、富裕層向けのビジネス・モデルが適していると思うが、どう思うか?
A2. 既に大同毛織が同じビジネスポジションで中国大陸に進出している。オーダーメイドで着心地の良いものが好まれている。この点については日本製が信頼されている。
大同毛織も「ニューヨーカー」というブランドを展開しており、店舗数も増加させていることから業績も伸びていると思う。このポジションでの中国進出は十分に可能性があると思う。
Q3. 中国において、ファッションデザイナー等、ブランド確立に必要な人材のアパレル関連教育はどのようになっているのか? また繊維産業に対する研究はどうか?
A3. 東華大学(旧中国紡績大学)などにデザイナー養成校がある。ファッションモデルを養成する教育もある。また東華大学は日本の文化服装学院とも提携している。
繊維産業は日本では衰退産業と思われているので研究者が減少傾向だが、中国では日本よりも研究者や研究機関は多いと思われる。
Q4. 中国ブランドでの海外進出の問題点として、縫製の劣悪なところ、つまり品質の低さについて信頼性の問題はないのか?
A4. ブランドの価格が安価であればあるほど、信頼性もそれに比例する。しかし、たいていの商品において、中国の縫製に関しての技術力は十分にある。顧客の信頼を裏切るような品質は、今はあまりない。
Q5. 中国ブランドで漢字を使ったブランドはあまりないが?
A5. カタカナ表記や英語表記は、欧米への憧れがある。漢字を使用したブランドはあまりかっこ良いと思われていない。
 
森澤先生コメント
 繊維・アパレル産業は、どの国おいても工業化の初期段階ではリーディングセクターとして機能し、電機・電子産業や自動車産業に先駆けて多国籍化した。その多国籍化のビジネス・モデルは自動車や半導体産業とも多くの点で共通性をもっていて、興味深い。先進工業国では、アパレル産業はすでに衰退産業となっているが。中国の場合、13億という人口を抱え、今後も内需の拡大が望める。辻先生の講義で指摘されたように、中国では繊維・アパレル産業はフルセット型産業構造として、他国に類例のない巨大な産業集積が形成されており、それが中国アパレル産業の強みとなりうる。そのため中国のアパレル産業は日本等の先進工業国で見られた衰退過程とは異なる経路をたどると考えられる。中国のアパレル産業において新しいビジネス・モデルの展開が期待される。
以上

司会:正子遼、書記:吉村 厚信、山本康裕
担当教官:森澤恵子
 

辻先生を囲んで
 




▲このページのトップへ

Copyright