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  2007年度 ワークショップ講演録



■第05回ワークショップ(2007年5月18日)

ゲストスピーカー:大阪ガス株式会社 代表取締役専務 横川 浩氏

タイトル : 大阪ガスの経営課題とアジア
T)講師紹介
1970年 東京大学法学部卒業  通産省入省
1987年 ニューヨーク総領事館領事(〜1990年)
1991年 青森県警察本部長(〜1993年)
1996年 近畿通産局長(〜1998年)
1999年 生活産業局長(〜2000年)
2000年 日本貿易振興会理事(〜2002年)
2002年 大阪ガス顧問、2003年 常務取締役、2005年 代表取締役専務取締役
   
U)講義概要
講義資料PDF[831KB]
1.大阪ガスの概要
大阪ガス株式会社は、大阪を中心に、兵庫、京都、奈良、和歌山の一部地域を含む3,220km2、680万世代にガスを供給している一般ガス事業者である(別紙資料「大阪ガスのサービスエリア」参照)。関西の全地域を供給対象としているわけではないので、「関西ガス」とは呼べない。都市ガスの販売量では全国第2位、ガス導管総延長は56,500qに及ぶ。泉北と姫路の2ヵ所に製造所を構えており、最も遠いパイプラインは滋賀まで延びている。現在三重と滋賀を結ぶパイプラインが工事中であり、2年後に使用見込みである。ガス、LPG・電力・他エネルギー関連事案として、器具・ガス工事、不動産などの事業を運営している。

2.都市ガス供給事業の性格
ガス供給事業は公益性が高く、十分な収益が見込めなくても事業存続への社会的要請が強い。電力は全国を10社の地域独占企業で分割しているが、ガス供給事業者は全国で212社もあり、そのうち36社は公営企業である。しかもその企業規模は都市や地域ごとのガス需要規模に規定されるため、平均的には決して大きくなく、従業員数51名以上のものは公営でわずか7社、私営でも176社中わずか61社しかない。50人以下の小規模事業者は公営では29社と圧倒的多数を占めており、私営企業でも全体の3分の2の115社を占めている。私営176社のうち従業員300人超、資本金10億円超の大企業と呼べる企業は11社しかない。大阪ガスの従業員は7,000人、東京ガスは9,000人だが、10人以下の企業が32社もあり、企業規模にこれだけのばらつきがあるのが都市ガス供給事業の大きな特徴である。大阪の河内長野ガス、兵庫の丹後ガス、奈良の大和ガス等、狭い地域を対象とする企業が存続している。兵庫県の城崎には町営ガスがあったが苦しくてやって行けず、大阪ガスグループに売った。豊岡までタンクローリーで液化天然ガスを運び、そこの気化設備を使って供給を続けている。
ガス管を敷設しても採算に乗らない過疎地域はプロパンガス事業者がカバーしており、近畿だけでも約25,000社ある。

3.大阪ガスの原料調達
競争原理を導入することにより産業は強化されるという考え方に基づき、公益事業であるエネルギー産業にも、産業基盤を強化し、サービスを安定供給するために、市場競争原理が導入され、自由競争の時代に入った。この10年で価格自由化の範囲が少しずつ広がった。標準家庭の年間使用量は500〜600m3だが、大きなスーパーの使用量は10万m3程度だ。平成7年には年間契約数量200万m3以上が価格自由化の対象であり、その比率は36%だったが、平成19年度には10万m3以上が対象となり、その比率は約50%となる見通しだ。このように自由化は進展している。
自由化により、電力とガスの相互参入が進んだ。電力会社は原料としてLNGを輸入し、これを燃やして発電している。このLNGを燃やさずにガスとして供給すれば、すぐにガス供給事業者になれる。事実、近畿地方のガス供給事業の約10%のシェアを関西電力に取られている。他方、ガス会社も電力を供給し始めている。大阪ガスも堺に110万kwの発電所を建設中であり、独立発電事業者として戦国時代に突入する。これからは総合エネルギー事業の競争時代になるだろう。関西の地盤沈下によりネルギー需要が伸びない時代の中で、電力とガスの相互参入により、競争が一層重層化し、激化することになるだろう。

4.保安・安全の確保
パロマ、リンナイなどのガス器具が、大阪ガスが作った器具も含めて、問題を起こした。昔の都市ガスは一酸化炭素が含まれており、これを吸うと中毒死した。現在の都市ガスはLNGに切り替わっており、ガスを吸っても死ぬことはない。しかし、換気が不十分な状態でガスを燃やすと酸素が不足する。ガスに関わる事故は、今では酸欠死がほとんどだ。ナイフを使っていて不注意で手を切っても、ナイフの製造メーカーに批判は集まらないが、ガスの場合は使う側の不注意であっても人命に関わることなので、メーカーに批判が集まる。十分な換気確保の呼びかけを一層強化し、事故の起きにくいガス器具造りに努めねばならない。

5.技術・研究開発
ガス供給事業にも大きな影響を与えるエネルギー関連の技術開発として注目されているのが、水素燃料電池の開発である。水素燃料電池とは、水素と酸素を反応させることによりにより電気と水を発生させるシステムである。水に電気を通して水素と酸素に分解する電気分解のプロセスを逆にしたものである。電気の他に発生するのは水だけであり、従来の化石燃料エネルギーとは違って公害が発生しない、次世代のクリーン・エネルギーとして、大きな期待が寄せられている。ハイブリッド・カーの次は水素燃料電池による自動車の時代が来る。これからの社会は水素社会であり、水素こそ救世主だ。長期エネルギー供給のために、ガス事業者も水素燃料の技術開発を推進している。
その他に注目されている技術として、大型コジュネレーション工場の推進が挙げられる。従来は廃棄されていた発電の際に生じる廃熱を回収し、冷暖房などに利用する新発電技術である。この技術は従来冷暖房に要していた電力供給を不要とすることにより電力会社の電力供給を奪っている面があり、省エネルギーと同時に温暖化回避を通じて、環境負荷低減に大いに貢献している。

6.原料(天然ガス)の確保
エネルギー需要の増大によるエネルギー貿易の拡大に伴い、エネルギー供給の脆弱性はより大きな懸念となるだろう。特に石油の供給はOPEC中東諸国およびロシアといった限られた国に依存せざるをえない。その中で、天然ガスは石油と異なり、世界中にバラバラに賦存しており、安定供給が確保しやすい。日本は原油の90%を中東に依存しているが、大阪ガスの天然ガスは70%弱をインドネシア、ブルネイ、マレーシアのアジア3国に、15%をオーストラリアに、16%をオマーン、カタールの中東2国に依存している。
しかし近年では天然ガスでも供給コントロールの動きが見えてきており、ロシアとイランが天然ガス版オペックの組織化に動いている。但し、天然ガスの場合は15年の長期契約がほとんどなので、たとえオペックのような機構を組織しても石油の場合のような影響力を発揮できる可能性は小さいと考えている。とは言え、こうした動きに対処するために、これまでは上流権益について他人任せだったが、これからは開発段階から資金を提供してリスクをとる方向である。

7.大阪ガスの国際展開
大阪ガスは独立発電事業者(IPP)として電力を関西電力に卸売りしているが、スペインその他の海外でもIPP事業を展開している。本年3月には、グアム島で電力供給公社に電力を長期に供給しているマリアナス・エナジー社の株式を100%取得し、海外におけるIPP事業を強化した。大阪ガスはマルチエネルギー事業者への発展を目指しており、電力卸売り事業は国内外を問わず重要分野と位置づけている。
他方、海外でのガス供給事業には今のところ慎重である。これまで実績がなく、将来もすぐには実現できない。国家、行政サイドからの関与が不可避であり、料金に対する政策圧力がかかる恐れが強いため、慎重にならざるを得ない。ガス供給事業のエンジニアリングでは、中国その他に協力している。

8.アジアのエネルギー情勢
世界のエネルギー消費は2030年までに現在の1.6倍になると予測されている。特に中国とインドはそれぞれ2倍になると見込まれており、将来エネルギー消費超大国になるのは確実だ。地域別ではアジアの伸びが特に急速であり、1971年の消費量に較べると5.6倍も増加すると見込まれている。こうした動きの中で、上流権益を持つ国は急増しつつある。
アジアのLNG需要を見ると、2005年の9200万dから、2030年には2億dに増加する見通しである。この間日本は一貫して最大の需要国であるが、その占める割合は63%から37%に低下する。他方、中国は0%から16%に、インドは5%から16%に急増する見通しだ。
アジアでは石炭の消費比率が極めて高く、環境に大きな負担となっている。世界の一次エネルギー消費構成を見ると、2004年時点では石油が38%、石炭が27%、天然ガスが23%であるのに対して、アジアでは石炭が48%、石油が35%、天然ガスが10%であり、石炭の比率が極端に高く、天然ガスの比率が極めて低いという特徴がある。2030年の時点でも、石炭42%、石油34%、天然ガス14%と予測されており、石炭への過重依存体質から脱するのは難しい。
石炭を100として環境負荷を比較した場合、二酸化炭素では石油が約80、天然ガスが約55であり、硫黄酸化物では石油が約67、天然ガスは0であり、また窒素酸化物では石油は約70、天然ガスは約53である。アジアの一次エネルギー消費で石炭の比率が高いということは、アジアの環境汚染がそれだけ早く進むということを意味しており、エネルギー消費構成の適正化はアジアにとり大きな課題である。
二酸化炭素の2030年の排出量は2002年に比べ、世界全体で1.6倍に増加する見通しであるが、中国とインドはいずれも2.2倍に達する見込みである。
しかもアジア諸国のエネルギー効率は押しなべて悪く、同じ1単位のGDPを産出するために、最も効率の悪い中国は日本の7.6倍も多くエネルギーを消費している。環境問題に国境は無く、アジア全体で3「E」(Energy Security, Economic Growth, Environment Protection)の達成が求められる。
このようなアジアのエネルギー情勢を踏まえ、日本がアジアで果たすべき役割は、技術とノウハウの提供によりアジア全体のエネルギー利用効率を高め、エネルギー・環境問題に対する相互補完関係を確立し、環境負荷低減のために先進国・途上国が一体となった温暖化対策を実施し、戦略石油備蓄等に関する協力を強化していくことであろう。
   
W)質疑応答
  杉本教授 質問は
(1)大阪ガスの事業内容
(2)電力はじめエネルギーの競合
(3)アジアのエネルギー情勢と日本の役割という順に展開するよう指示
Q1. 大阪ガスも発電事業をやっているが、高層マンション等でコンパクトな発電システムは考えられないか?(長谷川)
A1. 大阪ガスも3年前からエコウィルという一戸建て住宅やマンション向けの発電と熱供給システムを売り出している。これらを今後、複数の住居やマンションに供給するシステムを研究している。管理を簡便にし、複数家庭で公平に効率よく使用できるものである。
Q2. 関電もガス供給を行っている。大阪ガスは新しい資源によるエネルギー供給(バイオマス等)は考えてないのか?(小田)
A2. LNGのもつ環境に対する長所は大きいので、ガス供給の基本はLNGだと考えている。大規模に他のエネルギー資源に切り替えるという事は考えてない。但し、ゴミ焼却施設へコジェネレーション発電機を入れて発電し、隣接するプールへ熱供給をしたりするようなことは積極的に進めている。また、風力発電、太陽光発電をガス供給と組み合わせて、住宅に入れることも模索している。『再生エネルギー法(RPS法)』に対応して、新しい再生エネルギーを使わねばならない事情も計算にある。阪神大震災では大変な経験をしたが、あの時ガスを長期に遮断する経験を通して災害時の現場対応技術を蓄積した。この経験は貴重であり、地震が起きるとその地域にすぐ技術者を派遣して、被害エリアを特定し、問題が生じた場合その特定地域に被害を限定する技術を提供して、協力している。
Q3. 中国へ進出しているとのことだが、大阪ガスの有利な点は何か?(周)
A3. 中国へのガス供給事業での進出は考えていない。中国で実施しているのは、各地のガス会社の設備更新やエンジンアリング面での協力等である。
Q4. エネルギー事業の自由化が進展しているとの事だが、具体的には誰でも供給可、参入可なのか?大阪ガス以外に、関西でガス供給事業にどのような企業が参入しているのか?全国各地の電力・ガス会社の相互参入と競合の状況はどうか?(藤川)
A4. 最大の参入企業は関西電力である。全国の電力会社のガス等他エネルギーへの参入状況は各社バラバラだが、関電が最も積極的である。東京電力は関電ほどガスの世界に入ってきていない。電力会社はどこでもその地域に中核企業だが、ガス会社は規模がまちまちだ。東京ガスを10とすれば、大阪ガスの規模は8であり、東邦ガスは3、西部ガスは1程度の規模だ。電力会社と地域のガス会社の体力は巨大な差があり、惻隠の情が働いているのか、電力供給で手一杯なのかは分からないが、関電程ではないところが多い。全国では関電のガス参入がダントツに際立っており、大阪ガスの供給エリア内の10%が関電のガスに置き代わっている。しかし電力事業への参入は大規模な建設投資が必要なため、極めて困難である。IPPの供給量はせいぜい1〜2%程度しか占めていない。独立発電事業にはガス会社だけでなく、他の産業の企業も参入している。三菱商事がダイアモンドパワーという企業を設立して参入している。大阪ガスはNTTと東京ガスでエネットという会社を設立して、発電々力を卸し売りしている。鉄鋼企業も参入している。
Q5. ガス事業者は50名以下の企業が7割である。大企業とどちらがメリットがあるのか?(篠原)
A5. 小規模のガス会社は歴史も古く地域限定で家業として維持している。例えば河内長野ガスは大阪ガスが手当したLNGを購入して地域に都市ガスを供給をしている。大きな企業に依存しながら、地域の事業を継続している。地域の需要規模によっては小規模の事業者の活動余地があるということだと思う。
Q6. ガスの供給圧力は製造拠点から遠くになるほど弱まると考えられるので、ガス製造所はパイプライン網の中央付近に立地するのが合理的だと思う。泉北製造所はパイプライン網のほぼ中央に位置しているので良く理解できるが、姫路製造所は何故地域西端の姫路に立地したのか?(杉本教授)
A6. 昔の石炭ガスは石炭を乾留してガスを生成していた。姫路は石炭の陸揚げ港であり、また工業地帯で需要家が多く集中していた為だ。ガスは遠距離を移送する場合には、途中に昇圧設備を設置しなければならなくなる。昇圧設備設置によるコスト増よりも、需要家の集中する地域への供給圧力強化を優先したことになる。
Q7. ガスの売上げとガス機器の売上の比率はどれ位か?(鈴木)
A7. ガスの売上が90%位。コジェネレーション業務用厨房機器は機器の売上にも、ガスの売上増にも貢献している。利益率も良いので、力を入れている。ガス器具メーカーは弱電メーカーと比較して販売力も弱く、新製品の開発やマーケティングもガス会社自身が行っている。業務用の厨房が電化されてしまうと、ガスも売れなくなるので力を入れている。
Q8. 外食産業をやっているのはどういう狙いか?(長谷川)
A8. 「きんれい」が和食チェーン「かごの屋」とコンビに向け冷凍麺の食品販売をやっていたが、外部資本も参入し、大阪ガスの本体事業からの独立性も強いので、発展的に手離した。
Q9. 大阪ガスは他のガス会社と比較して、ガス器具の販売比率は大きい。矢崎総業は「弱電」と似たようなイメージで「弱ガス」という概念を打ち出し、これで大きくなろうとした時があったが、矢崎総業のようなガス器具メーカーが増える方がガスの販売拡大につながるのではないか?(岩橋)
A9. 電気の使用用途は実に様々で、そのための機器も多様であるが、ガス器具の商品数は電気と較べ極めて限られており、マーケットも小さい。電気器具メーカーは彼らが主体となって次々と用途を開発して行ったが、ガスの場合用途は限られており、ガス器具メーカーは減少していった。いろんな企業にガス器具市場に参入して欲しい。
Q10. オール電化ウィズガスはどちらが安いか?(徐)
A10. 機器本体とランニングコストの2種類の費用がかかるがトータルで言えばウィズガスの方が割安だと思うが、著しい差ではない。
Q11. 安全性はどちらが優れているか?(徐)
A11. 異質の安全性がある。もちろんガスコンロには炎がついており、それなりに注意していただく必要はある。一方、電気はIH(電磁誘導加熱)でやはり火事や火傷の被害もあるし、電磁波の人体への影響が懸念されている。IHは炎が無いので危険を予知しにくく、知らずに熱くなったプレートに触ってしまうから却って危険な場合もある。ガスの場合、昔の石炭ガスは吸引すると死亡したが、今のLNGからのガスは吸っても死なない。異質の一長一短がある。
Q12. かつては日本でも石炭でガスを作っていた。山西省は中国でも最大の産炭地であり、日本は太原市に対中ODAを供与したこともある。中国は石炭が安くて豊富であり、日本の技術で環境に良い使い方はできないか?(霍)
A12. 石炭は極めて豊富な資源であり、使っていかざるを得ない。日本は石炭活用や環境負荷軽減技術を持っている。石炭の液化等中国が有効活用出来る部分はあると思われる。しかし大阪ガスには、石炭ガスからLNGに切り替えてしまったので、そうした技術は現在では保有していない。
Q13. エネルギーのような国の基幹産業まで規制緩和を進めるのは国家の安全のためによいのか?(浜田)
A13. 重要なポイントだ。通産省時代規制緩和を推進したが、国家の安全に関わるような部分でどこまで規制緩和してよいのか、自問自答していた。規制にはネガティブな面が必ずある。しかし、規制を緩和することによるマイナス面も必ずある。問題はそのバランスだと思う。この10年間の規制緩和は当然だった。これが間違いだったという気はしない。しかし、完全な自由競争を目指すべきだと考えたわけではない。規制緩和をどこまで徹底させるのか、難しい局面だ。公益事業については、どこかでブレーキをかけねばならない時点がある。エンロンが日本に入ってくるという時、外国からの資本が基幹産業に入ってくるのは本当に良いのかが問題となった。当時は良いと思っていたが、今はよく考えないといけないと思っている。
Q14. メジャーが日本に進出という事もあるのでは?(浜田)
A14. アラブの資金も入りはじめている。エネオス(新日本石油)をドバイの資本が全部買うと言ったら、どうぞどうぞと言えるのか、深刻な議論をせねばならい。電力会社、ガス会社の外資比率も大きくなっている。規模によっては外資のファンドが買えるかも知れない。そうなった時、全く野放図でよいか議論が必要だ。
Q15. メジャーの壁をどのように乗り越えていくのか?(五十嵐)
A15. メジャーには引続き依存せざるを得ない。日本には石油や天然ガスの開発を業務とする国策会社があり、リスクマネーの提供や研究開発、国家備蓄等、石油産業全体に共通するような事項は石油公団がやってきた。しかし小泉改革の特殊法人見直しの中で、石油公団は廃止された。上流権益を実際に確保するのは各民間石油企業だが、これにリスクマネーを提供して応援するのが石油公団だった。石油公団廃止後それらの機能は金属鉱業事業団に統合されたが、その機能が低下したことは否めない。こうした現状に対し問題指摘がなされており、見直しが検討されつつある。安倍総理や甘利経産大臣によるサウジやウズベキスタンへの訪問も上流権益を確保しようとの外交的努力の一貫である。サハリンの石油、LNGの開発はメジャーと日本商社が一緒になって開発していたが、途中からロシアは自国のガスプロムに資本のかなりの部分を持たせたため、我国としては大きく後退せざるを得なかった。イランに対しても、アメリカの顔色を伺いながらだが、フランスの企業と一緒にというような工夫をしながらやっている。しかしメジャーと喧嘩することは出来ない。また、メジャーとしても権益を持っているだけでは意味がなく、売れなければ儲からないので、日本のような大口の買い手は当然大切にせざるを得ない。同時にメジャーだけに依存していてはダメで、独立した資源ルート確保の努力がなされてこそ、メジャーの対日重視が確保できる。
Q16. 中国は社会主義で、ガス・電力はすべて国有企業だ。日本は民営化されており、関西電力と大阪ガスの間で結構激しい競争がある。中国ではオール電化にはなっておらず、ほとんどの家庭はガスであるが、中国でも電力との間で日本のような激しい競争となるのか?(斐丹)
A16. 中華料理はガスでなければ駄目だ。だから中国ではオール電化は難しいのではないか。国家が産業体制を統制すると、よい結果は出ない。無駄な競争が起きないようにとか、非効率な結果を生まないようにとか、神の手で市場を完璧にマネージできればそれに越したことは無いが、それは不可能なことだ。日本でも国家が統制して産業体制を動かすと、どうしても非効率なところが生じてしまう。やはり、競争によって効率化を図ることが人類の英知だろう。上海のガスはすでに一応民営化されている。
Q17. CO2の削減等、環境対策にあまり取り組んでいないような印象を受けたが、実際はどうなのか?(坂戸)
A17. 恐らく私の技術的知見が乏しいために、自然とそうした話題を避けてしまい、大阪ガスは環境コンサーンが低いという印象を持たれてしまったとすれば、それは私の話し方が悪かったせいだ。環境対策を経営として極めて重視しており、真剣に取組んでいる。具体的にはRPS法に対応した風力発電や、燃料電池の研究開発等は、全て環境改善を最大の目的として取り組んでいることだ。多くのコジェネレーション製品も、すべて大阪ガスがやっている訳ではないが、大阪ガスの重要経営課題として、大きな経営資源を投入して取組んでいる。
以上

司会:岩橋 健二、記録:川村 忠隆、李 明慧
担当教官:杉本 孝




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